医薬部外品OEM開発ガイド|薬機法・承認申請・製造期間と費用
公開日: 2026-02-19
医薬部外品とは|化粧品との違いと表示可能な効能効果
医薬部外品とは、薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)で定められた区分の一つで、医薬品と化粧品の中間に位置する製品カテゴリーです。人体への作用が緩和であり、あらかじめ厚生労働大臣が指定した有効成分を配合することで、特定の効能効果を表示・広告できます。
化粧品と医薬部外品の最大の違いは、効能効果の訴求範囲です。化粧品は「肌を整える」「肌にうるおいを与える」など56項目の抽象的な効能しか表示できませんが、医薬部外品は承認を受けた具体的な効能効果を表示できます。
医薬部外品で表示可能な主な効能効果
- 美白:「メラニンの生成を抑え、しみ・そばかすを防ぐ」
- 育毛・養毛:「育毛、脱毛の予防、発毛促進」
- ニキビ予防:「にきびを防ぐ」「肌あれ・あれ性を防ぐ」
- デオドラント:「わきが(腋臭)の防止」「皮膚汗臭の防止」
- シワ改善:「シワを改善する」(2017年に追加された比較的新しい効能)
- フケ・かゆみ防止:「ふけ、かゆみを防ぐ」
- 日焼け止め:「日やけによるしみ・そばかすを防ぐ」
これらの効能を訴求できることで、消費者への訴求力が大幅に高まり、販売価格を高く設定しやすくなります。一般的に、医薬部外品は同等の化粧品と比較して1.5倍〜3倍の販売価格設定が可能です。D2Cブランドやサロン専売品において、差別化要素として医薬部外品を選択するケースが増加しています。
薬機法の許可区分|製造業許可と製造販売業許可
医薬部外品のOEM製造には、薬機法に基づく複数の許可が必要です。化粧品OEMとは許可区分が異なるため、正確に理解しておく必要があります。
製造業許可(OEMメーカー側が取得)
- 医薬部外品製造業許可(一般区分):バルク(中身)の製造から充填・包装までを一貫して行える許可。設備要件として、専用の製造室、品質試験室、原料保管室が必要です。
- 医薬部外品製造業許可(包装・表示・保管区分):充填済み製品の包装、ラベル貼付、保管のみを行う場合の許可。バルク製造は行えません。
化粧品製造業許可しか持っていないメーカーでは医薬部外品を製造できません。OEMメーカー選定時には、「医薬部外品製造業許可(一般区分)」を保有しているかを必ず確認してください。許可番号は各都道府県の薬務課で公開されています。
製造販売業許可(ブランド側または販売者側が取得)
- 医薬部外品製造販売業許可:市場への出荷判定、品質管理(GQP)、安全管理(GVP)の体制を整備して取得します。総括製造販売責任者として薬剤師等の有資格者の配置が必要です。
多くのD2Cブランドは自社で製造販売業許可を持たないため、OEMメーカーの製造販売業許可を利用して製品を市場に出す形態が一般的です。この場合、製品の法的責任はOEMメーカーが負うことになるため、その分の費用が上乗せされます。自社ブランドとして本格展開する場合は、将来的に自社での製造販売業許可取得を検討する価値があります。取得には通常3〜6ヶ月の準備期間と、薬事担当者の採用が必要です。
承認申請の流れ|新規承認と承認前例ありの違い
医薬部外品を製造販売するためには、品目ごとに厚生労働大臣の承認を受ける必要があります(都道府県知事を経由して申請)。承認申請のプロセスは、対象の有効成分に「承認前例があるか否か」で大きく異なります。
承認前例あり(前例のある有効成分を使用する場合)
- 過去に同じ有効成分・同じ効能効果で承認された実績がある場合、比較的簡易な手続きで承認を取得できます。
- 提出書類:製造販売承認申請書、規格及び試験方法に関する資料、安定性試験データ、製造方法に関する資料
- 審査期間の目安:6ヶ月〜10ヶ月
- OEMメーカーが過去に同じ処方で承認を取得していれば、その承認実績を活用してさらに迅速に進められます。
新規承認(前例のない有効成分・組み合わせの場合)
- 新規の有効成分や、前例のない効能効果を申請する場合は、膨大な安全性・有効性データが求められます。
- 追加で必要な資料:毒性試験データ(単回投与、反復投与、皮膚感作性、光毒性等)、薬理試験データ、臨床試験データ
- 審査期間の目安:1年〜2年以上
- PMDA(独立行政法人 医薬品医療機器総合機構)への事前相談が推奨されます。相談手数料は1回あたり約10〜30万円です。
申請に必要な主な書類一覧
- 医薬部外品製造販売承認申請書(様式第12号)
- 起源又は発見の経緯及び外国における使用状況等に関する資料
- 物理的化学的性質並びに規格及び試験方法等に関する資料
- 安定性に関する資料
- 安全性に関する資料
- 効能効果に関する資料(新規の場合)
初めて医薬部外品OEMに取り組む場合は、承認前例のある有効成分を選定し、承認申請の実績が豊富なOEMメーカーに依頼するのが最も確実なアプローチです。
有効成分の選定|承認前例のある主要成分リスト
医薬部外品の開発において最も重要な判断の一つが有効成分の選定です。承認前例のある有効成分を選ぶことで、申請の難易度と期間を大幅に抑えることができます。以下に、効能カテゴリー別の代表的な有効成分を紹介します。
美白(メラニン生成抑制)
- トラネキサム酸:プラスミンの活性を阻害し、メラノサイトの活性化を抑制。承認前例が豊富で最も採用しやすい美白成分の一つ。配合濃度は通常1.0〜2.0%。
- ナイアシンアミド(ニコチン酸アミド):メラノソームの輸送を阻害。美白に加え「シワ改善」の効能でも承認前例があり、ダブル訴求が可能。
- アルブチン(α-アルブチン):チロシナーゼの活性を阻害。配合濃度は3.0〜7.0%が一般的。
- L-アスコルビン酸2-グルコシド(AA2G):安定型ビタミンC誘導体。水溶液中での安定性が高い。
- 4-メトキシサリチル酸カリウム塩(4MSK):メラニン排出を促進する独自のアプローチ。
肌荒れ防止・ニキビ予防
- グリチルリチン酸ジカリウム:甘草由来の抗炎症成分。化粧水からクリームまで幅広い剤型に配合可能。配合上限は0.5%。
- アラントイン:細胞増殖促進・抗炎症作用。敏感肌向け処方に好適。
- イソプロピルメチルフェノール(IPMP):殺菌成分。ニキビの原因菌であるアクネ菌に対する効果で使用。
- サリチル酸:角質溶解作用。ピーリング効果を期待したニキビ予防製品に配合。
育毛・発毛促進
- センブリエキス:血行促進作用。育毛剤の定番成分。
- ニンジンエキス:毛母細胞の活性化。
- D-パントテニルアルコール:毛髪の成長を促進。
有効成分の選定は、ターゲットとする効能効果、処方の安定性、原材料コスト、そして承認申請の容易さを総合的に判断して決定します。OEMメーカーの処方開発担当者と相談しながら、最適な成分を選びましょう。
安定性試験・安全性試験の詳細
医薬部外品の承認申請には、製品の品質を証明するための安定性試験と、人体への安全性を確認するための安全性試験の両方が必要です。これらの試験データは承認審査における重要な判断材料となります。
安定性試験
- 加速試験:40℃±2℃・相対湿度75%±5%RHの条件下で6ヶ月間保存し、性状(外観、色調、におい)、pH、粘度、有効成分の含量を定期的に測定します。試験開始時、1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月の各時点でデータを取得するのが標準的です。
- 長期保存試験:25℃±2℃・相対湿度60%±5%RHの条件下で3年間保存(製品の使用期限設定の根拠となります)。承認申請時には最低6ヶ月分のデータがあれば申請可能ですが、残りの期間は申請後も継続して試験を行います。
- 温度サイクル試験:-5℃〜40℃のサイクルを繰り返し、乳化の安定性やクリームの分離の有無を確認。特にエマルション製剤(乳液、クリーム)では重要な試験です。
- 光安定性試験:120万lux・hr以上の総照度および200W・hr/m2以上の総近紫外線照射量の条件下で、有効成分の分解や変色がないかを評価します。
安全性試験
- パッチテスト(ヒトパッチテスト):被験者の上腕内側または背中に製品を24〜48時間貼付し、皮膚刺激性を評価。通常20〜50名の被験者で実施します。費用は30〜60万円程度。
- RIPT試験(Repeated Insult Patch Test):反復塗布による感作性(アレルギー性)を評価する試験。9回の塗布(誘導期間3週間)後、2週間の休止期間を経て、再塗布して反応を確認します。被験者50名以上、費用は50〜100万円程度。
- スティンギングテスト:敏感肌を対象に、ピリピリ感やかゆみなどの感覚刺激を評価。敏感肌向け商品では実施が推奨されます。
- 眼刺激性試験:目の周辺に使用する製品(アイクリーム等)の場合に必要。
これらの試験は外部の受託試験機関に委託するのが一般的です。OEMメーカーが提携している試験機関を紹介してもらえば、スムーズに進められます。全試験の合計費用は30〜80万円が目安ですが、試験項目を追加するほど費用は増加します。
製造期間の目安|企画から発売まで12〜18ヶ月のタイムライン
医薬部外品のOEM製造は、一般化粧品と比較して承認申請プロセスが加わるため、企画から発売までに12〜18ヶ月を要します。以下に各工程の標準的なスケジュールを示します。
Phase 1:企画・処方設計(1〜2ヶ月)
- 商品コンセプトの策定、ターゲット設定
- 効能効果の選定、有効成分の決定
- OEMメーカーの選定・契約
Phase 2:処方開発・試作(2〜3ヶ月)
- ベース処方の選定または新規処方開発
- 試作品の作成と官能評価(使用感、テクスチャー、香り)
- 通常3〜5回程度の処方修正を繰り返します
Phase 3:安定性試験・安全性試験(6〜8ヶ月)
- 加速試験(6ヶ月間):処方確定後すぐに開始
- パッチテスト、RIPT試験を並行して実施(2〜3ヶ月)
- 規格及び試験方法の設定・バリデーション
- この期間が最も長く、スケジュール全体のボトルネックになります
Phase 4:承認申請・審査(6〜10ヶ月)
- 承認申請書類の作成・提出
- 都道府県薬務課による審査
- 照会事項(追加質問)への回答対応
- 承認前例のある成分で照会が少なければ6ヶ月程度、照会が多いと10ヶ月以上かかることもあります
Phase 5:量産準備・製造(1〜2ヶ月)
- 承認取得後、容器・包装資材の手配
- パッケージデザインの最終確定・印刷
- バルク製造→充填→包装→検品
注目すべき点は、Phase 3とPhase 4が一部並行して進められることです。加速試験の6ヶ月データが揃った時点で承認申請を行い、長期保存試験は申請後も継続します。この並行運用により、全体のスケジュールを2〜3ヶ月短縮できます。事前にOEMメーカーとスケジュールをすり合わせ、並行可能な工程を把握しておきましょう。
費用相場|承認申請・試験・製造にかかるコスト
医薬部外品のOEM製造にかかる費用は、一般化粧品よりも高額になります。以下に主要なコスト項目と相場を示します。
承認申請関連費用
- 承認申請代行費用:50〜150万円。申請書類の作成、行政との折衝、照会対応を含みます。OEMメーカーが自社で対応する場合と、薬事コンサルタントに外注する場合で費用が異なります。
- 申請手数料(都道府県):約3〜5万円(自治体により異なります)
- PMDA事前相談費用:10〜30万円/回(新規成分の場合に必要)
試験費用
- 安定性試験(加速試験+長期保存試験):10〜30万円
- パッチテスト:30〜60万円(被験者数による)
- RIPT試験:50〜100万円
- 規格試験・分析費用:5〜15万円
- 試験費用の合計目安:30〜80万円
処方開発・試作費用
- 処方開発費:10〜30万円(OEMメーカーの既存処方ベースなら安価、フルカスタムなら高額)
- 試作費:1回あたり3〜8万円(通常3〜5回実施)
製造費用(量産時)
- 最小ロット:1,000〜3,000個が一般的
- 1個あたりの製造単価:200〜500円(内容量30〜50mLの場合)
- 3,000個ロットの場合、製造費合計:60〜150万円
- 容器・包装資材費:1個あたり50〜200円
初回プロジェクト全体の費用感
- 初期費用(申請+試験+開発):150〜350万円
- 量産費用(3,000個):75〜210万円
- 合計目安:250〜550万円
一般化粧品のOEMが100〜200万円程度で開始できるのに対し、医薬部外品は2〜3倍のコストがかかります。ただし、販売価格を高く設定できるため、中長期的な収益性で見れば投資回収は十分に可能です。
OEMメーカー選定のポイント|承認申請サポート体制を見極める
医薬部外品のOEM開発では、一般化粧品以上にメーカー選びが成功を左右します。以下のポイントを重視して選定しましょう。
承認申請のサポート体制
- 自社内に薬事申請の専門部署を持っているか。外部の薬事コンサルタントに丸投げするメーカーよりも、社内に薬事担当者がいるメーカーの方がスピードと精度が高い傾向にあります。
- 過去の承認取得件数を確認しましょう。年間10件以上の承認実績があるメーカーは、行政対応のノウハウが蓄積されています。
- 照会事項(審査中の追加質問)への対応経験が豊富なメーカーは、審査をスムーズに進められます。
既存承認品目の数と種類
- OEMメーカーが既に承認を取得している品目数は重要な指標です。既存の承認品目と類似の処方であれば、承認前例を活用した迅速な申請が可能になります。
- 美白、ニキビ予防、育毛など、自社が狙う効能カテゴリーでの承認実績があるかを具体的に確認しましょう。
研究開発力と設備
- 自社研究所を保有し、処方開発から安定性試験まで内製できるメーカーは、外部委託が多いメーカーよりもリードタイムが短く、コストも抑えやすいです。
- 分析機器(HPLC、UV分光光度計、粘度計など)を自社で保有しているかも確認ポイントです。規格試験を外注すると追加コストと時間がかかります。
製造販売業許可の利用可否
- 自社で医薬部外品製造販売業許可を持っていない場合、OEMメーカーの製造販売業許可を利用できるか確認が必要です。この場合、製品の市場責任はメーカーが負うため、その分のコスト上乗せがあります。
コミュニケーションと透明性
- 承認申請の進捗を定期的に報告してくれるか。長期プロジェクトになるため、月次での進捗共有の仕組みがあると安心です。
- 費用の内訳を明確に提示し、追加費用が発生する場合は事前に相談があるか。医薬部外品は想定外の試験追加などで費用が膨らみやすいため、透明性の高いメーカーを選ぶことが重要です。
初めての医薬部外品開発では、複数のOEMメーカーに相談し、承認申請のサポート範囲と費用を比較検討することを強く推奨します。メーカーの力量によって、申請期間が数ヶ月単位で変わることも珍しくありません。